家に幸福を呼ぶとされる座敷わらし。
数多くの伝承や伝説が残され、様々な創作物に登場しているように、日本人にとってはなじみ深い妖怪です。
しかし、一言で座敷わらしと表現していても、いくつかの種類があることをご存じでしょうか?
この記事では、座敷わらしの種類の中から、主に「チョウピラコ」について解説していきます。
座敷わらしとは
まずは、基本である「座敷わらし」そのものについて見ていきましょう。
座敷わらしとは、主に東北地方で語られることの多い、住む家に富や幸福をもたらし、彼らが去ると没落するとされる妖怪です。
民俗学者の柳田国男が『遠野物語』の中で紹介したことから、一躍有名になりました。
2~6歳の子供の姿をしているとされ、福をもたらすと共に、かなりのいたずらものでもあります。
人間の体の上で相撲を取ったり、布団の上からまたがったりなどするため、座敷わらしのいる家で眠った人は金縛り状態になるといわれています。
座敷わらしといえば女の子をイメージするかもしれませんが、男の子であったり、性別がわからなかったりすることもあると言います。
ときには夫婦で現れるといった話も残っているため、見た目や性別、年齢など、特定のパターンを持たない存在だといえるでしょう。
座敷わらしの種類
座敷わらしにはいくつかの種類がいるとされています。
種類によって現れる場所や性質が違うようで、階級に近いものもあるようです。
以下に、主な座敷わらしの種類をまとめてみました。
コメツキワラシ、ノタバリコ:土間に住むとされる座敷わらし
クラボッコ:蔵に住むとされる座敷わらし
細手長手:吉凶の前兆として現れる手。座敷わらしの一種とも
また、座敷わらしの色についても様々な話があり、赤い座敷わらしは凶事を、白い座敷わらしは幸福を呼ぶとする説もあります。
座敷わらし・チョウピラコとは
座敷わらしの中に種類があると先に述べました。
では、チョウピラコとはどんな存在なのでしょうか。
チョウピラコとは、色白で、美しい容姿をした座敷わらしを指します。
奥座敷に住み、座敷わらしの中でも上位の存在とされました。
「座敷わらし」と聞いて最初に想像する像と近いかもしれませんが、男女双方の目撃談があります。
座敷わらしという一般化された妖怪であっても、チョウピラコについての資料は多くありません。
非常に謎めいた存在で、「なにをもって」上位だとしているのかも難しい部分です。
しかし、チョウピラコが現れるという奥座敷の役割に目をやれば、彼らという存在の一部が見えてきます。
土間や蔵を好み、そこに住み着く座敷わらしが多い中、チョウピラコは奥座敷を好んでいます。
奥座敷は現代の家ではめったに見かけなくなりましたが、かつては、賓客を招いたり、結婚式を挙げたりといった用途に使われていました。
つまり、普段とは違う特別な日に利用されていたのです。これを「ハレの日」と表現します。
奥座敷を家族が使用するプライベート空間と見る向きもありますが、チョウピラコについて考える場合は、この利用方法が重要です。
この辺りは、座敷わらしのイメージに近いでしょう。
座敷わらしもまた、外部から招き入れる「客」的な一面を強く持つ存在です。
外部から来てもらい、できるだけ長くとどまってもらう。
チョウピラコは賓客である客神として扱うべき存在であり、奥座敷は彼らをもてなすための場所として利用されたのでしょう。
チョウピラコには、「色が白くて美しい」という特徴があります。
この特徴はどことなく、「深窓の姫君」といった風情を感じさせます。
お姫様は普段表に出ないため日焼けをせず、容姿も美しいものだというイメージがあるからです。
座敷わらしのヒエラルキーが人間のものと同じかどうかは分かりません。
しかし、チョウピラコが座敷わらしの中でも上位であることには、奥座敷に住み着くことやその容姿が関係していることは確かでしょう。
何にせよ、チョウピラコを始めとした座敷わらしは、できるだけ家にいて欲しい存在であり、それと同時に、なかなか思うようにいかない少し難しい「お客神」だったと言えそうです。
チョウピラコが登場する伝承
座敷わらしの伝承を読んでいると、「チョウピラコが住んでいた」などとはっきり語る伝承はほとんどありません。
しかし、その姿形などからチョウピラコであったと考えられるものをいくつかご紹介していきます。
伝承の内容は分かりやすくまとめたものになります。
お姫様の座敷わらし
「綾織村(現:岩手県遠野市綾織町)の多左衛門の家に、元お姫様の座敷わらしがいた。
それがいなくなると、家が没落してしまった」
これは柳田国男の『遠野物語』に掲載されているものですが、別の地域に似た伝承が残されています。
「岩手県の下閉伊郡の袖家には”お姫様の部屋“と呼ばれる部屋があり、そこに座敷わらしが住んでいた。
その座敷わらしを”お姫様の座敷わらし“と呼んでおり、先祖が連れ帰ったお姫様と関係があるとされる」
かなり似た形を持つ2つの伝承ですが、綾織村があった場所と下閉伊郡は車で2時間程とかなりの距離があります。
いたずら者の座敷わらし
「陸中国和賀郡谷内村(現:岩手県花巻市あたり)の畠山氏の家には昔から座敷わらしが住んでいたという。
大正4年の春、召使たちが集まって話していたところ、台所の梁の上から瀬戸物が落ちてきた。
主人はこれを、奥座敷に住む座敷わらしの仕業だと言う。その座敷わらしは4、5歳程度の見た目で、透き通るように白い肌、キレイな歯並びを持ち、主人にしか見えない。
同年、畠山氏の家が火事に遭ったとき、その家から走り出した座敷わらしを見たものがいるという」
チョウピラコの特徴が色濃く香る伝承のため、ここに記載しました。他の伝承にも「歯並びが良い」という特徴が多く見られます。
異質なもの難しいもの
「鱒沢村(現:岩手県遠野市あたり)に、コスズという農家があった。この家には昔から座敷わらしが住み着いており、毎日お膳に乗せた食事を供えていた。
また、座敷わらしは複数いるようで、奥座敷から御神楽のような賑やかな音が聞こえてくることもあった。
やがて、食事のお供えをやめてしまうと、家運も傾いていったという。また、家の傍にいる湧き水から流れる小川にいるメダカは皆片目だった。
他から入ってきた場合でも、片目になってしまうのだという」
「土渕村(現:岩手県遠野市あたり)の北川氏の家の奥座敷に、他所に住む叔父が泊まりに来た。
その夜、神仏を祀る隣の部屋から細長い手が現れて、その叔父を手招きするような動きをした。
その後、叔父は海難により、家族や財産を失ってしまったのだった」
吉凶の前兆であるとされるものですが、現れ方が少し不気味であることも考えると、少し恐ろしい気持ちになってしまいます。
まとめ
少し不気味なものがあるにせよ、やはり、人々にとって身近で親しみやすく、それでいて「神」としての側面も強く見られる存在です。
今現在、座敷わらしの存在は昔より遠くなってしまいました。
しかし、今もなお、座敷わらしは人々を見守っているかもしれません。
柳田国男『新版 遠野物語 付・遠野物語拾遺』角川ソフィア文庫 昭和30年
朝里樹(監修)、寺西政洋・佐々木剛一 著『日本怪異妖怪辞典 東北』2022年
小松和彦(監修)常光徹・山田奨治・飯倉義之(監修)『日本怪異妖怪大辞典』2025年
佐々木喜善『遠野のザシキワラシとオシラサマ』昭和52年
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